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笑う男 ヘニング・マンケル

イースタ署の警部、クルト・ヴァランダーは、完全な正当防衛ながら人を殺したことから鬱症状から抜け出せず1年以上にわたり休職していた。
デンマークの海岸沿いの町、スカーゲンで療養中、イースタで付き合いのあった弁護士、ステン・トーステンソンに訪ねて来られ、父親の死について調べるように頼まれた。自動車事故として処理されたが、ステンはそうは思えないと言う。
その日ヴァランダーは、退職を決意し、医者とビュルク署長に電話で辞職の意を伝え、辞職届けを出すために1週間後イースタに戻って来た。しかし、ステン・トーステンソンが銃殺されたことを知り、辞職の手続きをするために会ったビュルクに復職を告げ、トーステンソンの事件捜査担当を希望する。


Amazonの『笑う男』のページ

ヴァランダーが朝起きて寝るまで(あるいはほとんど寝ないで翌日を開始するまで)が人物を描くドキュメンタリーのように描かれている。そこに、スウェーデン人、スウェーデンの警察官の生活を知っていく楽しみがある。地方都市で警察官、離婚して独り暮らしの中年男性で、事件を追っている最中はほとんど私生活と呼ぶべきものがないのだが。
でも、これがむしろ私には親しみが湧きやすいのかもしれない。『氷姫』のエリカのように、作家としての野心を持ちながらも、おいしそうな手料理を作り、おしゃれ、ダイエット、恋愛に心を砕く人物や、『消えた少年』のマリアのように、何より気にかかるのは子どものこと、次に仕事と恋愛という人物より、殺人事件という重要案件を前に、他のすべてを脇に押しやって生活するような人物(ヴァランダー)というのが、自分に近いと感じられる。自分はヴァランダーのように社会的に重要な仕事をしているわけではないが、納期に追われて仕事をしていると、他のことは脇に押しやって生活しているから。読書が寝落ちるまでのわずかな時間の楽しみだ。

ヴァランダーは、特に本作ではほとんどの日を朝早くから夜遅くまで捜査に打ち込んでいる。この勤勉さも好感が持てる。

本作には女性刑事、アン=ブリット・フーグルンドが登場する。警察学校で優秀な成績を修め、全国の警察署に望まれながら、本人が希望してイースタ署に配属されたという。
ヴァランダーは、女性であり新しい世代の人間であるフーグルンドを同僚として扱うことに戸惑いを感じながらも、率直にその能力を認め、取り立てていく。というところも、好感だ。
これを読んで、90年代に会ったある女性を思い出した。その女性は、男社会を思わせる業界の一流企業に入社し、本社の広報部門に配属されたという。しかし、女性ゆえに彼女の働きは妨害され評価されなかったため、辞めたという。私は自分がフェミニストだと思うが、彼女の言うことは違うのではないかと思っていた。女性ゆえに差別されたのは真実かもしれないが、そこをなんとかして関係を構築して仕事で成果を上げられなかったのは彼女の能力の問題と受け止めるべきことではないかと。少なくともそれを環境のせいにして言ってまわるのは彼女のプラスにはならないように思えた。
その点、フーグルンドは、先輩刑事に明らかな嘘をつかれた際、正しい方法で対処した。怒るヴァランダーを制し余計に事を荒立てることを避けた。小説の中だからできるのだと言えばそれまでだが、賢い女性としてうかがわせる描写だった。

腐敗行為で免職になった元警官、クルト・ストルムが最後にヴァランダーに協力を申し出る。
その理由についてのヴァランダーの解釈が良い。ストルム本人が現にヴァランダーに言っていることではないのだが、ヴァランダーがストルムの人としての倫理を信じているというところが泣ける。

犯人が真相を簡単に告白するというのはちょっとお粗末なように感じるし、ヴァランダーが最後に絶体絶命から逃れたのもずいぶんラッキーなようだけど、全体に面白かったのでOK。

最後になんと、クリスマスにバイバ・リエパがイースタに来るという。『リガの犬』以来、ヴァランダーがプラトニックに片想いしていた相手が。ヴァランダーは手紙を破っては捨てたり、拙い英語で電話を掛けたり、完全に片想いだと思っていたのに。
シリーズ次作、『目くらましの道』で、きっとその様子が描かれているんだよね?
THEME:海外小説・翻訳本 | GENRE:小説・文学 |

白い雌ライオン ヘニング・マンケル

イースタの不動産業者が売却不動産の査定に出掛けた先で、失踪した。
南アフリカでは、長く収監されていたネルソン・マンデラが釈放されたが、アパルトヘイト(人種隔離政策)は続いていた。動乱期にあるなか、殺し屋のヴィクトール・マバシャは高額の報酬で対象は知らされないまま暗殺の依頼を受けた。マバシャは、依頼主の要請により準備のため、元KGBの協力者、コノヴァレンコとともにスウェーデンに潜入した。
イースタ署に勤める警部ヴァランダーは、不動産業者の失踪を捜査したことから、潜入者たちを追い、追われることになる。


Amazonの『白い雌ライオン』のページ

シリーズの第1作、第2作でもヴァランダーの自信のなさ、弱さが描かれているが、本作で、さらに顕著。
なにしろ、同僚に銃口を向けて精神状態を疑われ、一段落ついたときには、鬱症状で疾病休暇を取っている。
行方を断って、独断で犯人グループと対決を始めてしまうって組織に属する人間としてどうかと思われるところだ(それも身内が人質に取られて、警察に連絡するなと言われた段階では、あり得る行動の選択肢になるのだが)。規律に反しても自分で大きな問題を何とかしようとするという発想は個人的に嫌いだ。

それなのに私は自分でも意外に思うほど、そんなヴァランダーに好意的だ。
理由は、ヴァランダーの自己評価の低さ、そして、それでも物事に前向きに対処しているところにある。
世の中はすごい勢いで複雑化し、人がそこに対応しきれないと感じるのは無理もない。だからといって、それを正当化したり、世の中が間違った方向に向かっていると主張したりするというのは個人的に嫌いだ。前向きさがない。
しかし、ヴァランダーはその事実を受け止め、対応できない不安を正直に認めるが、そんな世の中を批判して正当化はしていないと思う。
その正直さと弱さに惹かれてしまう。
また、よく知らない人の死に対しても、それが殺人によるものであれば強く憤る。それが正義感と言うよりも、人としての情として描かれている。
しょうがない中年のオヤジではあるが、愛すべき男だ。

1990年代のシリーズで、第1作、第2作は東欧だったのに本作では、どうしてアフリカなのだと読む前には思ったが、そうだ、1989年に南アフリカでネルソン・マンデラの釈放があり、90年代にアパルトヘイトの撤廃があった。世界の歴史的な変動をモチーフにするという点で、本作もシリーズの一貫性を維持している。

物語は4月24日に始まり、6月12日に終わる。(プロローグを除いて。プロローグの始まりは4月21日で、やはり4月下旬だ)
つまり、20年以上が経過しているが、季節は今なのだ。
スウェーデン、南アフリカと地理的な違いはあっても、季節の時期的シンクロ感を味わいながら読めた。
南半球である南アフリカの季節は逆だし、スウェーデンは4月下旬ですでに日が暮れるのが遅くなっているという違いを知るのも味わいのうち。
今までの寒々しい描写も悪くないが、春(から初夏?)の描写はいい。4月30日のヴァルボリスメッソ・アフトン(春の祭典)、ヴァランダーの父親の再婚の結婚式の予定の日という夏至祭など、冬が長いこの国でどんなに晴れやかな祭りになるのだろうと想像を膨らませるのも楽しかった。

非常に読み応えがある。1冊だけど、活字が小さく行間が詰まった(19行/1ページ)うえでの700ページ。(先日読んだ上下巻で600ページ(16行/1ページ、活字が2周りぐらい大きい)より何割も文字数が多い。明らかに。
ボリュームがあるのはいいけど、文字が小さく行数が多いと、行から行へと進めるときに、正しい行(次の行)に目が行かないことがしばしば起きる(私だけ?)。なので、最近のでか活字のほうが歓迎できる。
このシリーズを読んでいくにつれ正しい行への目運びができるようになることに期待。
THEME:海外小説・翻訳本 | GENRE:小説・文学 | TAGS:

リガの犬たち ヘニング・マンケル

クルト・ヴァランダー シリーズ第2作
スウェーデンの南海岸沿いに位置する小さな町、イースタの警察署に匿名の電話があった。「まもなく近くの海岸に死んだ男二人を乗せた救命ボートが打ち上げられる」という。電話の予告どおり、ボートは打ち上げられる。
イースタ署に勤める警部ヴァランダーは、この捜査にあたる。間もなく死体がラトビア人とわかり、リガの警察署からリエパ中佐が派遣され、何日かの共同捜査の末、この事件の捜査はリガに引き継がれることになった。
死体はリガへ送られ、リエパ中佐も帰って行った。
しかし、リエパ中佐は殺され、中佐の上司からイースタ警察署に捜査の協力依頼があり、ヴァランダーはラトヴィアに飛んだ。


Amazonの『リガの犬たち』のページ

前作同様陰鬱な話が多い。ヴァランダーはベテラン刑事だが、相変わらず自分に自信が持てず、転職を考えている。有能な先輩捜査官のリードベリはガンで亡くなった。スウェーデンでは南で海岸沿いとは言え、寒そうな描写が続く。
しかし、その上を行く、リガの、ラトビアの陰鬱さ。ソ連支配下の監視社会、貧富の差。
これを読み進めば、事件は解決する。そうすれば、心がぱーーっと晴れる。そんな気持ちで読んでいた。
陰鬱であればあるほど、解決は晴れやかに感じるはず。

また、殺されていた二人の男が抱き合うように横たわっていたというのが、何かいいなあ、真相がわかったときに感動があるんじゃないだろうかと思わせる。

また、ヴァランダーが恋愛感情から、荒唐無稽とも思えるとんでもない決断をして、事件に深入りしていくというところもいい。決断の理由として民主化とか真相究明とかいう大義名分より説得力がある。
その恋愛の行方は、相手の作ったへたな手料理で自分と相手の人間の種類の違いを知るというところで事実上決着したのだろう。うならされた。

犯人のリエパ中佐殺害の理由はちょっと呆気ない。でも、その他の点でハラハラどきどきしたから、まあいいか。

次は『白い雌ライオン

BBCがドラマにしたものも見たいなー。
THEME:ミステリ | GENRE:小説・文学 |

殺人者の顔 ヘニング・マンケル

スウェーデン南部の小さな農村で農民の老人が惨殺される。その農村を管轄とするイースタの警察官、クルト・ヴァランダーが事件捜査の指揮を取る。
発見時には重傷ながらまだ息のあった農民の妻は、「外国の」とひと言発して、亡くなってしまう。それが犯人に関することなのかどうかは明らかにしないまま。


Amasonの『殺人者の顔』のページ

スウェーデンが広く外国から移民を受け入れていた時代。そして、元からのスウェーデン人にそれについて不満を持つ者が現れ始めていた時代。
農民の妻のいまわの際のひと言がマスメディアに漏れ、ヴァランダーら警察署は殺人事件捜査と、外国人への攻撃の警戒の両方にあたらなければならなくなる。
さらにヴァランダーの私生活と話はてんこ盛りだが、不思議ととっちらかった感じはない。

北欧小説の主人公たちは、どうしてみんな離婚しているんだ?(ミレニアムのリスベット(独身)を除く)これでもというぐらい気の毒な描写がされがち(ミレニアムのミカエル(島耕作並みのもってもて)を除く)
中でもヴァランダーは気の毒そうだ。さらに元妻を殴っていたり、社会的に情けないことをしたりと主人公にこれはないと思えるような記述が。
それでも随所に活躍するし、オペラ好きという高尚な趣味がなんとか救っている。

それにしても男が女を殴るっていうのも北欧小説に毎度出てくる。特に暴力的とは描かれていない人物たちのDVなんかがね。平均的に日本人より筋骨に恵まれているだろう北欧の男が女を殴るって怖いって毎度思う。

90年代初頭の話だから、スマホとインターネットでコミュニケーションと情報取得ができる現代の話よりじれったいとは思ったものの、シリーズ読むよ。面白かったもん。

THEME:ミステリ | GENRE:小説・文学 |
プロフィール
自分的に人生で一番の読書ブーム到来。 忘れっぽいので、読んだ本のログをとることにしました。 題名だけじゃ、内容を覚えられなくて、読んだことすら忘れるほどの忘れんぼ。
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