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笑う男 ヘニング・マンケル

イースタ署の警部、クルト・ヴァランダーは、完全な正当防衛ながら人を殺したことから鬱症状から抜け出せず1年以上にわたり休職していた。
デンマークの海岸沿いの町、スカーゲンで療養中、イースタで付き合いのあった弁護士、ステン・トーステンソンに訪ねて来られ、父親の死について調べるように頼まれた。自動車事故として処理されたが、ステンはそうは思えないと言う。
その日ヴァランダーは、退職を決意し、医者とビュルク署長に電話で辞職の意を伝え、辞職届けを出すために1週間後イースタに戻って来た。しかし、ステン・トーステンソンが銃殺されたことを知り、辞職の手続きをするために会ったビュルクに復職を告げ、トーステンソンの事件捜査担当を希望する。


Amazonの『笑う男』のページ

ヴァランダーが朝起きて寝るまで(あるいはほとんど寝ないで翌日を開始するまで)が人物を描くドキュメンタリーのように描かれている。そこに、スウェーデン人、スウェーデンの警察官の生活を知っていく楽しみがある。地方都市で警察官、離婚して独り暮らしの中年男性で、事件を追っている最中はほとんど私生活と呼ぶべきものがないのだが。
でも、これがむしろ私には親しみが湧きやすいのかもしれない。『氷姫』のエリカのように、作家としての野心を持ちながらも、おいしそうな手料理を作り、おしゃれ、ダイエット、恋愛に心を砕く人物や、『消えた少年』のマリアのように、何より気にかかるのは子どものこと、次に仕事と恋愛という人物より、殺人事件という重要案件を前に、他のすべてを脇に押しやって生活するような人物(ヴァランダー)というのが、自分に近いと感じられる。自分はヴァランダーのように社会的に重要な仕事をしているわけではないが、納期に追われて仕事をしていると、他のことは脇に押しやって生活しているから。読書が寝落ちるまでのわずかな時間の楽しみだ。

ヴァランダーは、特に本作ではほとんどの日を朝早くから夜遅くまで捜査に打ち込んでいる。この勤勉さも好感が持てる。

本作には女性刑事、アン=ブリット・フーグルンドが登場する。警察学校で優秀な成績を修め、全国の警察署に望まれながら、本人が希望してイースタ署に配属されたという。
ヴァランダーは、女性であり新しい世代の人間であるフーグルンドを同僚として扱うことに戸惑いを感じながらも、率直にその能力を認め、取り立てていく。というところも、好感だ。
これを読んで、90年代に会ったある女性を思い出した。その女性は、男社会を思わせる業界の一流企業に入社し、本社の広報部門に配属されたという。しかし、女性ゆえに彼女の働きは妨害され評価されなかったため、辞めたという。私は自分がフェミニストだと思うが、彼女の言うことは違うのではないかと思っていた。女性ゆえに差別されたのは真実かもしれないが、そこをなんとかして関係を構築して仕事で成果を上げられなかったのは彼女の能力の問題と受け止めるべきことではないかと。少なくともそれを環境のせいにして言ってまわるのは彼女のプラスにはならないように思えた。
その点、フーグルンドは、先輩刑事に明らかな嘘をつかれた際、正しい方法で対処した。怒るヴァランダーを制し余計に事を荒立てることを避けた。小説の中だからできるのだと言えばそれまでだが、賢い女性としてうかがわせる描写だった。

腐敗行為で免職になった元警官、クルト・ストルムが最後にヴァランダーに協力を申し出る。
その理由についてのヴァランダーの解釈が良い。ストルム本人が現にヴァランダーに言っていることではないのだが、ヴァランダーがストルムの人としての倫理を信じているというところが泣ける。

犯人が真相を簡単に告白するというのはちょっとお粗末なように感じるし、ヴァランダーが最後に絶体絶命から逃れたのもずいぶんラッキーなようだけど、全体に面白かったのでOK。

最後になんと、クリスマスにバイバ・リエパがイースタに来るという。『リガの犬』以来、ヴァランダーがプラトニックに片想いしていた相手が。ヴァランダーは手紙を破っては捨てたり、拙い英語で電話を掛けたり、完全に片想いだと思っていたのに。
シリーズ次作、『目くらましの道』で、きっとその様子が描かれているんだよね?
THEME:海外小説・翻訳本 | GENRE:小説・文学 |

煽動者 ジェフリー・ディーヴァー

ナイトクラブのライブ中に火災を思わせる異臭があった。会場を満席にしていた客は会場から出ようと出口に詰めかけたパニック状態になった。結果、死傷者を出した。異臭は建物の外から意図的に送り込まれ、非常口がふさがれ、事故ではなく意図的に起こされた犯罪であったことがわかった。
キャサリン・ダンスは捜査を担当し、同時に再発防止対策も講じるが、群衆のパニックを利用する犯罪は再び起きる。


Amazonの『煽動者』のページ

閉塞された空間で人が命の危険を感じて恐怖の虜になったときに取る行動を想定して仕掛けられる犯罪というのは斬新。

一方、過去に読んだディーヴァー作品と同様、犯人はサイコパスのようであるが、残虐な行為で事故の要求を満たす以外は理性的行動を取る。というより、その実行のために、徹底的に計画を練り、状況を合理的に判断し、計画をうまく進めるためには衝動をコントロールすることができる。
そこが恐ろしさを増加しているのだが、同時に面白さを強化してもいる。

他のキャサリン・ダンス シリーズと同様、キャサリン・ダンスには処理しなければならないその他の問題がいくつか持ち上がる。
その中のひとつ、ダンスの恋愛問題。ダンスの決断に、人間性の疑問を感じた。日本では、ヒロインが取る行動として理解されるだろうか。文化的違いなんでしょうかね。

このシリーズは、キネシクスとしてダンスが巧妙な犯罪者と対峙するというところが一番の見所と考えていたが、今回、それが顕著に発揮されるシーンはなかったなあ。単にダンスがキネシクスを用いて、相手の白黒を判断したり、相手の心理状態を読んだりするぐらい。
だからといって、面白くなかったわけじゃない。

日系人と日系人の強制収容所が出てくる。
戦争中に日本人・日系人にアメリカが政策で行ったこと。『パズルパレス』の原爆投下、NHKのドキュメンタリーの第442連隊戦闘団と日系人強制収容。ここのところ続いている。

約2年ぶりのキャサリン・ダンス シリーズ(そして、ジェフリー・ディーヴァー)。
読み始めてすぐ怖さ、気持ち悪さが私の許容範囲を超えていると思った。それで、もう嫌だと。
でも、読み終わって考えると、人が死ぬところや死んだ様子の描写には、そうそうグロテスクなところはない。
じゃあ、なんでそう感じたかと考えると、ディーヴァーの筆力ゆえなのだろう。つまり、本作はスリラーとして高レベルのスリルを提供している。
(けれども私はスリラーがそんなに好きじゃないんだな、きっと)
THEME:海外小説・翻訳本 | GENRE:小説・文学 |

白い雌ライオン ヘニング・マンケル

イースタの不動産業者が売却不動産の査定に出掛けた先で、失踪した。
南アフリカでは、長く収監されていたネルソン・マンデラが釈放されたが、アパルトヘイト(人種隔離政策)は続いていた。動乱期にあるなか、殺し屋のヴィクトール・マバシャは高額の報酬で対象は知らされないまま暗殺の依頼を受けた。マバシャは、依頼主の要請により準備のため、元KGBの協力者、コノヴァレンコとともにスウェーデンに潜入した。
イースタ署に勤める警部ヴァランダーは、不動産業者の失踪を捜査したことから、潜入者たちを追い、追われることになる。


Amazonの『白い雌ライオン』のページ

シリーズの第1作、第2作でもヴァランダーの自信のなさ、弱さが描かれているが、本作で、さらに顕著。
なにしろ、同僚に銃口を向けて精神状態を疑われ、一段落ついたときには、鬱症状で疾病休暇を取っている。
行方を断って、独断で犯人グループと対決を始めてしまうって組織に属する人間としてどうかと思われるところだ(それも身内が人質に取られて、警察に連絡するなと言われた段階では、あり得る行動の選択肢になるのだが)。規律に反しても自分で大きな問題を何とかしようとするという発想は個人的に嫌いだ。

それなのに私は自分でも意外に思うほど、そんなヴァランダーに好意的だ。
理由は、ヴァランダーの自己評価の低さ、そして、それでも物事に前向きに対処しているところにある。
世の中はすごい勢いで複雑化し、人がそこに対応しきれないと感じるのは無理もない。だからといって、それを正当化したり、世の中が間違った方向に向かっていると主張したりするというのは個人的に嫌いだ。前向きさがない。
しかし、ヴァランダーはその事実を受け止め、対応できない不安を正直に認めるが、そんな世の中を批判して正当化はしていないと思う。
その正直さと弱さに惹かれてしまう。
また、よく知らない人の死に対しても、それが殺人によるものであれば強く憤る。それが正義感と言うよりも、人としての情として描かれている。
しょうがない中年のオヤジではあるが、愛すべき男だ。

1990年代のシリーズで、第1作、第2作は東欧だったのに本作では、どうしてアフリカなのだと読む前には思ったが、そうだ、1989年に南アフリカでネルソン・マンデラの釈放があり、90年代にアパルトヘイトの撤廃があった。世界の歴史的な変動をモチーフにするという点で、本作もシリーズの一貫性を維持している。

物語は4月24日に始まり、6月12日に終わる。(プロローグを除いて。プロローグの始まりは4月21日で、やはり4月下旬だ)
つまり、20年以上が経過しているが、季節は今なのだ。
スウェーデン、南アフリカと地理的な違いはあっても、季節の時期的シンクロ感を味わいながら読めた。
南半球である南アフリカの季節は逆だし、スウェーデンは4月下旬ですでに日が暮れるのが遅くなっているという違いを知るのも味わいのうち。
今までの寒々しい描写も悪くないが、春(から初夏?)の描写はいい。4月30日のヴァルボリスメッソ・アフトン(春の祭典)、ヴァランダーの父親の再婚の結婚式の予定の日という夏至祭など、冬が長いこの国でどんなに晴れやかな祭りになるのだろうと想像を膨らませるのも楽しかった。

非常に読み応えがある。1冊だけど、活字が小さく行間が詰まった(19行/1ページ)うえでの700ページ。(先日読んだ上下巻で600ページ(16行/1ページ、活字が2周りぐらい大きい)より何割も文字数が多い。明らかに。
ボリュームがあるのはいいけど、文字が小さく行数が多いと、行から行へと進めるときに、正しい行(次の行)に目が行かないことがしばしば起きる(私だけ?)。なので、最近のでか活字のほうが歓迎できる。
このシリーズを読んでいくにつれ正しい行への目運びができるようになることに期待。
THEME:海外小説・翻訳本 | GENRE:小説・文学 | TAGS:

リガの犬たち ヘニング・マンケル

クルト・ヴァランダー シリーズ第2作
スウェーデンの南海岸沿いに位置する小さな町、イースタの警察署に匿名の電話があった。「まもなく近くの海岸に死んだ男二人を乗せた救命ボートが打ち上げられる」という。電話の予告どおり、ボートは打ち上げられる。
イースタ署に勤める警部ヴァランダーは、この捜査にあたる。間もなく死体がラトビア人とわかり、リガの警察署からリエパ中佐が派遣され、何日かの共同捜査の末、この事件の捜査はリガに引き継がれることになった。
死体はリガへ送られ、リエパ中佐も帰って行った。
しかし、リエパ中佐は殺され、中佐の上司からイースタ警察署に捜査の協力依頼があり、ヴァランダーはラトヴィアに飛んだ。


Amazonの『リガの犬たち』のページ

前作同様陰鬱な話が多い。ヴァランダーはベテラン刑事だが、相変わらず自分に自信が持てず、転職を考えている。有能な先輩捜査官のリードベリはガンで亡くなった。スウェーデンでは南で海岸沿いとは言え、寒そうな描写が続く。
しかし、その上を行く、リガの、ラトビアの陰鬱さ。ソ連支配下の監視社会、貧富の差。
これを読み進めば、事件は解決する。そうすれば、心がぱーーっと晴れる。そんな気持ちで読んでいた。
陰鬱であればあるほど、解決は晴れやかに感じるはず。

また、殺されていた二人の男が抱き合うように横たわっていたというのが、何かいいなあ、真相がわかったときに感動があるんじゃないだろうかと思わせる。

また、ヴァランダーが恋愛感情から、荒唐無稽とも思えるとんでもない決断をして、事件に深入りしていくというところもいい。決断の理由として民主化とか真相究明とかいう大義名分より説得力がある。
その恋愛の行方は、相手の作ったへたな手料理で自分と相手の人間の種類の違いを知るというところで事実上決着したのだろう。うならされた。

犯人のリエパ中佐殺害の理由はちょっと呆気ない。でも、その他の点でハラハラどきどきしたから、まあいいか。

次は『白い雌ライオン

BBCがドラマにしたものも見たいなー。
THEME:ミステリ | GENRE:小説・文学 |

機は熟せり ジェフリー・アーチャー

1970年~1978年
バリントン海運会長のエマがヴァージニア・フェンウィックに訴えられた裁判の判決から、ジャイルズが恋したカリンの危機まで。

 
Amazonの機は熟せり検索結果

1970年~1978年というと私の少女時代になる。その頃のサブカルチャーが出てこないので読んでいてあんまり実感なかったけど。(セブのデートはバレエで演目は白鳥の湖だった)
ハリーとエマの息子、セブは私よりずっと年上で、私はその娘のジェシカの世代なんだなと確認。

アーチャーの作品は主人公に試練が数々あるもののそれらを乗り越え大成功。その分、バランスを取るかのようにバイプレーヤーに不幸が襲いかかる。
本作品の場合、ジャイルズとセブが割を食っていないか。女運が悪い。特にジャイルズ。
そう、ジャイルズと言えば、元妻のヴァージニア、活躍というか暗躍しすぎ。一族に関係ないところまで描かなくてもいいのではと思ったり。ジャイルズと結婚していたたから、一族の扱いなんだろうか。それにしてもレディーなのに浅ましい。レディーなんだから、ちょっとはレディーらしく振る舞ってくれてもと思うけど、そういうキャラクター付けになっちゃっているのよね。

次がシリーズ最終。This Was a Man。Amazonにはすでに英語版を読んだ人のレビューが書かれていて、おっと、中身がわかっちゃう…。でも、「なか見!検索」で、6部の最後のクリフハンガーがどうなったか確認。

前回新潮文庫を読んだのはクリフトン年代記の第5部だったはず。新潮文庫は文庫でも紐のしおりが入っているところが便利でいいと毎度思う。
THEME:海外小説・翻訳本 | GENRE:小説・文学 |

ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 ダヴィド・ラーゲルクランツ

人工知能研究者のフランス・バルデルは、突如アメリカからスウェーデンに戻り、元妻と再婚相手の元から自閉症である息子のアウグストを連れ出し、ストックホルムの自宅に引きこもっていた。公安警察の分析官、ガブリエラ・グラーネから「身に危険が迫っている」と警告を受け、自宅から警察が用意する隠れ家に避難するように言われ、さらに、一種の生命保険だと思ってバルデルが知っている秘密をマスコミに話すように勧められる。嵐のその夜、家に設置したセキュリティー・アラームが鳴り、セキュリティー会社の当直から電話があり、侵入者がいると言われる。
バルデルはミカエル・ブルムクヴィストに電話を掛け、ミカエルは夜中にタクシーでバルデルの家に向かった。

一方、リスベット・サランデルは、NSA(アメリカ国家安全保障局)へのハッキングに成功し、暗号化された内部文書を盗み出した。


Amazonの『ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (上)』のページ

ミレニアムの続編が出ていた! 私が3(と『ミレニアムと私』)を読んで間もなく。遺稿から書き起こされたものと期待したが、残念ながら違うらしい。出版社からこの作者、ダヴィド・ラーゲルクランツに新たに続編を書き起こす持ち込まれたそうな。
著作者人格権をめぐってはラーソンの事実婚のパートナーと遺族(父親と弟)がもめていたということだったけど、これが出て、「謝辞」に父親と弟の名前が出ていると言うことは、パートナーは負けたということになるのだろう。気の毒。

と、思ったせいかどうか、手にしてからしばらく読む気になれなかった。開くのが重いというか…
でも、読み始めたら、読み進めるのは早かった。
ちょっとネタばらしになる…アウグストにサヴァン症候群の特別な才能があるとわかる、バルデルに身の危険が迫る、リスベットがNSAにハッキングする、ミカエルがバルデルの家に着く、リスベットが殺し屋の手からアウグストを救い出す、NSAのセキュリティー管理最高責任者であるエドウィン・ニーダムがリスベットを追う手掛かりとしてスウェーデンに来てミカエルに会う…それから結末まで、上下巻700ページがあっと言う間。

けちを付けたいところはいろいろある。訳文は重訳だという以前の方がよかったとか、ホルゲル・パルムグレンにリスベットの過去をぺらぺらしゃべらせすぎだとか、リスベットの行方不明の妹の役はこれで正解だったのかとか。

でも、とにかく面白いし、よくできている。
リスベットとアウグストとの心の交流が泣かせる。

これが(スウェーデン語で)出てから、そろそろ2年。5が読みたい。
それと、ラーソンの遺稿の完成版も(結局、遺稿はどうなったんだろう。ダヴィド・ラーゲルクランツが遺稿を読んだという話はまったく出てこないので、今でもラーソンのパソコンの中に入っていて、そのパソコンをラーソンのパートナーが所持しているのだろうか)。
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殺人者の顔 ヘニング・マンケル

スウェーデン南部の小さな農村で農民の老人が惨殺される。その農村を管轄とするイースタの警察官、クルト・ヴァランダーが事件捜査の指揮を取る。
発見時には重傷ながらまだ息のあった農民の妻は、「外国の」とひと言発して、亡くなってしまう。それが犯人に関することなのかどうかは明らかにしないまま。


Amasonの『殺人者の顔』のページ

スウェーデンが広く外国から移民を受け入れていた時代。そして、元からのスウェーデン人にそれについて不満を持つ者が現れ始めていた時代。
農民の妻のいまわの際のひと言がマスメディアに漏れ、ヴァランダーら警察署は殺人事件捜査と、外国人への攻撃の警戒の両方にあたらなければならなくなる。
さらにヴァランダーの私生活と話はてんこ盛りだが、不思議ととっちらかった感じはない。

北欧小説の主人公たちは、どうしてみんな離婚しているんだ?(ミレニアムのリスベット(独身)を除く)これでもというぐらい気の毒な描写がされがち(ミレニアムのミカエル(島耕作並みのもってもて)を除く)
中でもヴァランダーは気の毒そうだ。さらに元妻を殴っていたり、社会的に情けないことをしたりと主人公にこれはないと思えるような記述が。
それでも随所に活躍するし、オペラ好きという高尚な趣味がなんとか救っている。

それにしても男が女を殴るっていうのも北欧小説に毎度出てくる。特に暴力的とは描かれていない人物たちのDVなんかがね。平均的に日本人より筋骨に恵まれているだろう北欧の男が女を殴るって怖いって毎度思う。

90年代初頭の話だから、スマホとインターネットでコミュニケーションと情報取得ができる現代の話よりじれったいとは思ったものの、シリーズ読むよ。面白かったもん。

THEME:ミステリ | GENRE:小説・文学 |

氷姫 カミラ・レックバリ

スウェーデン西海岸の小さな町、フィエルバッカで殺人事件が起きた。被害者は、フィエルバッカで12歳まで過ごし、イエーテボリに引っ越ししていった非常に美しい女性、アレクス。
ライターのエリカは、アレクスが引っ越して行ってしまうまでは、アレクスと大の仲良しだった。両親から県民新聞に掲載する追悼記事を書くように頼まれ、それとは別にアレクスの伝記を書きたいという野心を抱く。
アレクスの両親、夫とともに行ったターヌムスヘーデ警察署で幼なじみのパトリックと再会する。パトリックは刑事になっていた。
エリカとパトリックは急接近。
エリカは、謎の多いアレクスの身辺を探り、パトリックは刑事として事件の真相を探り、アレクスを殺した犯人を追う。


Amazonの『氷姫』のページ

若い女性作家ならではのエリカの心理描写。
そしてファッションやカロリーの取り過ぎを気にしながらおいしい料理を作ることに心を砕いたり。そして、膀胱炎の心配。
この寒い国では女性は風邪をひくことと同じ頻度で膀胱炎を心配しなくてはならないのだろう。消えた少年の登場人物もこの心配をしていた。もう一つ読みかけのスウェーデン推理小説にも出てきたように思うが、確信はない。私自身、この寒い時期、これらの作品を読んでいた日々にちょっとした痛みというか違和感があり、「もしかしてこれは尿道炎?」と思うことがあったので、日本とは遠い、行ったことのない地でありながらリアリティーがあった。
30代で、いろいろできるエリカにはあんまり親しみは湧かないけどね。

エリカよりもパトリックのほうにより好感を覚えた。礼儀正しい態度で人々に接して、捜査の聞き込みにあたり、子ども、赤ん坊にすぐに好かれる。
しかし、都会的、先進的な印象があるスウェーデンだが、田舎は田舎なんだろうなと思った。聞き込みに行く先々でコーヒーやケーキを出され、同僚にエリカとの仲を根掘り葉掘り聞かれるという人間関係の濃さ。

今までヨーロッパの国々って小さいよねって思っていた(チェコとかオーストリアとかベルギーとか小さいじゃん?)けど、スウェーデンはそこそこでかいな。フィエルバッカから、近辺で大きな町、イェーテボリの国際空港まで200キロ余りだそう。あ、Googleマップだと、そんなにないね。
https://www.google.co.jp/maps/dir/Fj%C3%A4llbacka,+%E3%82%B9%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%B3/Landvetter+(GOT),+438+80+Landvetter,+%E3%82%B9%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%B3/@58.1922434,10.6611125,8z/data=!3m1!4b1!4m13!4m12!1m5!1m1!1s0x46444ab498afaaed:0x2fb535a41099d251!2m2!1d11.2882238!2d58.5997756!1m5!1m1!1s0x464ffa015437846b:0x2460362f259684b3!2m2!1d12.292314!2d57.668799

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消えた少年 アンナ・ヤンソン

スウェーデン、ゴットランド島。観光客で賑わう7月の夏至祭りに近い日。
アンドレアスは、第一次世界大戦中、ゴットランド島沖で座礁したドイツ戦艦、アルバトロス号に夢中という少年。
ホームパーティーで母親と妹とともに出かけた先からいなくなり、姿を消してしまった。
夏の間だけゴットランド島で勤務する警察官のマリア・ヴェーンは、上司や同僚とともに事件を捜査する。


Amazonの消えた少年のページ

子育て世代の女たちが中心に描かれている。マリア、アンドレアスの母親であるシャルロッタ、シャルロッタのいとこであるスサンヌ、友達のエルヴィーラ。恋愛、夫婦関係、子どもとの関係、子どもの心配、女同士の関係が綿密に描かれている。
四人の女たちのうち、二人は離婚していて、一人は離婚を考え、もう一人は夫の浮気を疑う。誰一人として幸せな結婚生活を送っていないとはずいぶんシニカルだと思えるが、これは平均的なところなのかもしれない。だからなのかリアルだ。
そのパートナーや元パートナー、あるいは恋愛に絡みそうな男たちは、ほとんどが情けないか暴力的である。

登場人物の心理描写にページが割かれ、その合間に新たな事件が起きていくが、アンドレアスの捜査は一向に進んでいないように思われるというのが斬新。それでも、最後の最後に事件の真相が明かされる。

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特捜部Q―知りすぎたマルコ ユッシ・エーズラ・オールスン

マルコはゾーラが率いる一族(クラン)でゾーラの命令のもと、スリや物乞いで生活していた。稼ぎの少ない同じ一族の少年がそれをとがめられ折檻されることについて止めるようにゾーラに頼みに行った後、ゾーラがマルコに障がいが残るようなけがをさせるように命令していることを知った。マルコはすぐに一族が住む家から逃げ出した。その途中に一族の重大な秘密を知り、それを知ったゾーラはマルコを見つけ出して殺すように命令した。

一方、コペンハーゲン警察のカール・マークが率いる未解決事件捜査専門チームである特捜部Qでは、外務省上級参事官、ヴィルヤム・スタークの失踪事件を追うことになった。

 
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冒頭から、カメルーンの善良な開発援助プロジェクトのリーダー、ルイ・フォンが殺される。いやあな展開だ。
そして鋭敏で優秀なスタークがフォンの携帯からのショートメッセージから異変を悟り調査をしたところまでは物事が良いほうに向かっているという気持ちの良さを感じながら読んだ。しかし、その上司がフォンの殺害に関わっていて、共謀者がスタークの始末を確約するという流れに、はらはら。さあ、どうなっちゃう?と。

特捜部Qでよく出てくるけど、特に後ろ暗いところがあるわけでもない普通の市民が脅かされて警察には言わないというのが、これでも出てくる。特捜部Qに限らず欧米の小説でよくあるよね。なんで?人々は警察に対する信頼性が低い?犯罪者のことばに惑わされやすい?日本人だったら、「警察に言ったら~の命はない」なんて言われてもたいてい警察に言うよね。

一人になって悪事に手を染めないで前向きに生きようとするマルコ。しかし、ゾーラのクランやプロの殺人者に追われる。マルコを応援しようと思わない人はいないだろう。早く、カール、なんとかしてと願いながら読んだ。

悪事に手を染めた外務省高官やら銀行の幹部は、普通に捕まろうと、そうでなくどうなろうと知ったものではないというところだが、最後は意外な展開だった。

特捜部Qの新メンバー、ゴードン・タイラーは本編からだった、たしか。いいとこのぼんぼんらしい。ローサのことを気に入っている。
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プロフィール
自分的に人生で一番の読書ブーム到来。 忘れっぽいので、読んだ本のログをとることにしました。 題名だけじゃ、内容を覚えられなくて、読んだことすら忘れるほどの忘れんぼ。
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