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アンカー 今野敏

集英社 内容紹介: http://renzaburo.jp/anchor/


Amazonの『アンカー』のページへ

今野作品によくあるように、一番のポイントは人が組織でどのように仕事をするかだ。それが骨子とすれば、推理やテレビ局、警視庁という舞台は、その上の肉付けになる。

『ニュースイレブン』のデスク、鳩村が、報道局長の意向で配属された自分とは大きく意見の異なる新任サブデスクとどうやっていくか。そして、風来坊型の記者、布施や、その他の番組メンバーたちと番組をどうまとめていくか。そこが面白いところだった。
警視庁の継続捜査担当の黒田と谷口も布施にヒントをもらいながら、地道に捜査していくところもいい。

他のシリーズ同様、かる~く読めた。これもいいところ。
THEME:今野敏 | GENRE:本・雑誌 |

明るい夜に出かけて 佐藤多佳子

夜に明るく周囲を照らすコンビニ。
俺、富山は、接触恐怖症という心の病を抱え、大学で付き合っていた女の子のからみで、ソーシャルメディアで晒されたという事件で、大学に通えなくなり、休学中。
世田谷区の実家を離れ、海に近い横浜市の南でアパートを借り、コンビニの深夜バイトで生活している。
ある晩、偶然勤務している店で、自分が気に入っている番組、アルコ&ピースのオールナイトニッポンの職人(番組に投稿するリスナー)に会う。


Amazonの『明るい夜に出かけて』

真夜中に感じる独特の気持ち。高揚感、充たされたような、飢えているような気持ち。孤独なような、その時間の空間を支配しているような。どこかに仲間、自分と同じような人がいるのじゃないか、そんな人に巡り会いたいというような気持ち。
そんな真夜中に感じる何かが、本書で物語として表現されている。
深夜ラジオなんて中高以降、何十年も聴いていない、夜中にコンビニに行く、または、外を歩く、海を見に行くなんてことも長いことやっていない。最近、夜中に起きていることもよくあるが、仕事に追われているか、読書でうっかり眠り損ねているときだけだ。
それでも?それだから?伝わってくるものがあった。

滑らかで豊かな展開がパンチの効いた設定の上を走る。
接触恐怖症で、人に触られそうになると相手が女の子でも突き飛ばしてしまう俺。「虹色ギャランドゥ」というラジオネームの紙一重の投稿をする天才的職人が小柄な女子高校生。コンビニの深夜勤務のリーダーが、ライブやSNSで発信する「歌い手」で、確実なファンがいて、モテるのに破綻型の女の子が好み。
登場人物が有機的にからむことで生まれるうねりとハーモニー。
楽しんだ。

もうぬげない ヨシタケシンスケ

こどもの「ぼく」が服が脱げなくなって考えたこと。


Amazonの『もうぬげない』のページへ

ぼくのふくが ひっかかって ぬげなくなって、
もう どのくらい たったのかしら。


現状の提示→回想→現状説明→状況維持の空想→現状の問題→状況悪化→他者の介入と解決→類似問題の発生
服が脱げないまま、話が発展していき、服が脱げないままの生活を空想する。
どうなるの?ワクワクする。
ポーカーフェイスの猫を頭に乗っけて外を歩くさまなど、イラストも和める。

だって、ふくが ひっかかってるだけで、ほかのひとと
なんにも かわらないんだから。


服が脱げなくなったこどもを例えとして、精神的、状況的に似たような人や社会を暗示しているのではないかなんて思う。自分や、自分の周り、社会、歴史の「もうぬげない」を考える。

最初のページでの現状を示した導入の次が、状況に至るまでを説明する回想シーンと、時系列成っていない。こどもが読んで理解するには難しいのではと思うけど、それは自分がそういふうに話が飛ぶのに弱いからそう思うのだろうか。
THEME:絵本 | GENRE:本・雑誌 |

ときどき旅に出るカフェ 近藤史恵

奈良瑛子は、以前同じ会社に努めていた葛井円に再会した。円は瑛子の自宅のそばで、カフェ・ルーズというカフェを営業していたのだ。客を旅に出ている気分にさせるカフェ。円は、ほぼ毎月世界中に旅に出て旅先で出会ったおいしい料理やお菓子、飲み物をメニューに取り入れていた。
瑛子はカフェ・ルーズが気に入り、頻繁に通うようになる。

第一話 苺のスープ
第二話 ロシア風チーズケーキ
第三話 月はどこに消えた?
第四話 幾層にもなった心
第五話 おがくずのスイーツ
第六話 鴛鴦茶のように
第七話 ホイップクリームの決意
第八話 食いしん坊のコーヒー
第九話 思い出のバクラヴァ
最終話


Amazonの『ときどき旅に出るカフェ』のページ

第一話~第六話までは、瑛子の身の回りや店で起きた、ちょっとザワッとするような小さなミステリーを円または瑛子が看破していくという一話完結方式。
自宅のそばで気楽に行けてすてきな心地よいカフェで過ごす。このまま、ほわんほわんと続くのかと思いきや…。
第七話以降、カフェ・ルーズにライバル店登場というだけではない、円に何やらいわくがありげ。一話で完結しなくなり、「最終話」がそれまでのようなカフェメニューに掛けたタイトルがない。「最終話」とだけ記されたページを見ると、何とも不吉さを感じさせる演出。

語り手の瑛子は、控えめながらそつのない感じのいい女性だ。
好感の持てる人物だけに、心の中の描写として人を批判するときが刺さった。その批判が自分に当てはまるだろうと思えたから。カフェで大きな声で話していたり、人の悪口を言っていたりすることもあっただろう。
また、円も同様。外国のレストランにて日本語でその国を悪く言う。心当たり大アリ。
おっしゃることはごもっともだし、今後そのようなことのないようにとは思うけど、現実世界で自分が好きな瑛子や円のような人たちに内心そういうふうに思われていたんだろうなと思うとショックだよね。

瑛子のタイプは近藤氏の作品によくある若い男性の語り手とタイプが同じだ。内省的で周りをよく見ている。男性で世代も違うと、すてきな人物で流してしまうところだけど、同性となると、受け止め方が違うんだなあとも思った。
THEME:ミステリ | GENRE:小説・文学 |

回帰 今野敏

警視庁刑事部捜査一課 殺人犯捜査第三係の樋口顕(ひぐちあきら)の母校の門の近くで爆弾テロが起こった。指揮本部が設置され、刑事部のみならず、公安部やSITの者たちとの協調が求められる。
そんな中、樋口の上司である第二強行犯捜査担当の天童隆一が退職した元部下の因幡より電話があり、事件の前にテロを防ぎたいので協力してほしいと言われたという。しかし、その因幡は海外を放浪した末に、国際テロ組織に入ったという噂があった。


Amazonの『回帰』のページ

面白かった。
どんでん返しの展開と緊張感が…かなあ。
細部はむむむーというところがあったけど。

読んでいる間中、この表紙の写真はどこで撮ったのか気になっていた。NTTビルと新宿の高層ビル群らしきものが見え、手前にラグビーグラウンドがある場所。読み終わる少し前に気がついた。この事件現場と想定されている上智大学(作品のなかでは大学の名前は出されていない)の脇の桜並木の土手からの写真だ。ここ
最初に桜の季節にこの桜並木の土手に行ったときに土手の上から転げ落ちた(飲んだ後で酔っていた)。それで、ここに行くたび、ここの話題が出るたび、そのことが真っ先に思い出される。
THEME:今野敏 | GENRE:本・雑誌 |

継続捜査ゼミ 今野敏

小早川一郎は警視庁で刑事や警察学校校長の経歴があり、退官して大学(女子大)の准教授になった。
未解決の継続捜査案件を取り上げ、捜査の進め方や考え方を学ぶというゼミを設定した。
取り上げたのは、15年前に発生した居直り強盗と見られる殺人事件だった。一軒家に住む老夫婦が殺されていた。
ゼミ用資料を提供した目黒署の安斎をはじめ、警視庁の関係者は小早川ゼミに協力的で、ゼミ生は、それぞれの観点で意見を出し合いながら、事件の核心に迫る。



STのシリーズと共通する印象。
小早川とゼミ生たちが集団で移動して、それぞれの長所を活かすというところが。
もちろん、ゼミ生たちにSTメンバーたちのような専門性はないし、逆にSTメンバーたちのような変な弱点はない。そして、ゼミ生と小早川は、女子大生であるということと、評価の高い警視庁OBということで、関係者に歓迎されるというところも違う。

ゼミ生は全員熱心で、週1のところ、週2にすることを申し入れたり、ゼミ後毎度レストランに行ったりと楽しげ。

大学は三宿(世田谷区)にあるという設定。
今野氏はこの辺を使うのがお好きらしい。
任侠シリーズ(任侠病院かな)で弦巻。
安積班シリーズの安積か隠蔽捜査シリーズの伊丹が青葉台に住んでいたと記憶。
他にもちょくちょく出てくる。
THEME:今野敏 | GENRE:本・雑誌 |

心とろかすような―マサの事件簿 宮部みゆき

元警察犬で今は蓮見探偵事務所の犬となっているマサが語る事件簿。

心とろかすような
てのひらの森の下で
白い騎士は歌う
マサ、留守番する
マサの弁明


Amazonの『心とろかすような マサの事件簿』のページ

短編だから軽い話ばかりかと思ったが殺人事件も出てくる。

白い騎士の話は悲しいけれど、企業買収で出てくる「ホワイトナイト」の由来を知り、満足。

『パーフェクト・ブルー』からの流れで諸岡進也はもっと登場し、糸ちゃんとの関係も発展していくものかと思いきや、そうでもなかった。

『マサ、留守番する』は、動物虐待がモチーフなので、一番つらいかった。
THEME:ミステリ | GENRE:小説・文学 |

マカロンはマカロン 近藤史恵

コウノトリが運ぶもの
青い果実のタルト
共犯のピエ・ド・コション
追憶のブーダン・ノワール
ムッシュ・パピヨンに伝言を
マカロンはマカロン
タルタルステーキの罠
ヴィンテージワインと友情



短編の人が死なないミステリー。ああ、コージーミステリーって言うんだっけ?とにかく、気楽に軽~く読めるのがいい。

おいしそうな料理やお菓子が出てくるけれど、当面フレンチを食べに行くことも作ることも買うこともないだろうという状況から、料理やお菓子の記述はすっ飛ばし気味に読んだ。(ちょうど、戦闘シーンをぶっ飛ばして読んでいるように)そこも味わいどころなのだろうけど。

軽いなりに一ひねりある。「ヴィンテージワインと友情」のひねり技はよかったな。
THEME:ミステリ | GENRE:小説・文学 |

マル暴総監 今野敏

北綾瀬署管内で殺人事件が起きた。被害者は半グレの若者だった。刑事組織犯罪対策課の組織犯罪対策係の甘糟達夫は前日に被害者を含めた3人と管内に事務所を構える多嘉原連合の半ゲソ(準構成員)の2人がもめていたところを取りなしていたことから、捜査本部に加わることになった。
捜査本部では前日に二組がもめているところに割って入った白いスーツの男が怪しいとされた、まずはその男を見つけ出すことになった。


Amazonの『マル暴総監』のページ

へたれ警官、甘糟と、暴れん坊将軍を気取った警視総監。
設定がちょっと狙いすぎと思わなくもなかったが、犯人を割り出すまでの道筋は感心した。
THEME:今野敏 | GENRE:本・雑誌 | TAGS:

土蛍 近藤史恵

短編、中編、4点。

むじな菊

いくら美しくたってほいほいと尻尾を振るわけにはいかない。
菊の花びらのように見えたものが、狢の毛並みかもしれないのだから。


だんまり
男が髷を切られるという事件が連続して起きていた。

土蛍
水木巴之丞がいる中村座の芝居小屋で訳者が首吊りをした。

はずれくじ
ついていない男が富くじを買うことになった。


Amazonの『土蛍』のページ

読みやすい。何冊か読んでいない推理小説がある状況で、翻訳物は日本語で読むとは言え、日本人作家の物よりも理解するのに多くの脳力が必要になる。今まで読みやすく面白いと感じた日本人作家のものさえ、うーん高校生の話か…なんて具合。推理小説を読みたいのだけど、なんだかおっくうな気分。
そんなときにおなじみの近藤史恵、猿若町捕物帳シリーズ。
最初は時代小説ということで、とっつきにくかったけど、それはまったくなくなったなあ。

最後の話「はずれくじ」が、つくづくさびしい話で、読後、寂寥感が残るというのは欠点かなあ。「だんまり」や「土蛍」は、「ああ、よかった」で終わるからいいんだけどね。
THEME:ミステリ | GENRE:小説・文学 |
プロフィール
自分的に人生で一番の読書ブーム到来。 忘れっぽいので、読んだ本のログをとることにしました。 題名だけじゃ、内容を覚えられなくて、読んだことすら忘れるほどの忘れんぼ。
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読み散らかしています。
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