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白い雌ライオン ヘニング・マンケル

イースタの不動産業者が売却不動産の査定に出掛けた先で、失踪した。
南アフリカでは、長く収監されていたネルソン・マンデラが釈放されたが、アパルトヘイト(人種隔離政策)は続いていた。動乱期にあるなか、殺し屋のヴィクトール・マバシャは高額の報酬で対象は知らされないまま暗殺の依頼を受けた。マバシャは、依頼主の要請により準備のため、元KGBの協力者、コノヴァレンコとともにスウェーデンに潜入した。
イースタ署に勤める警部ヴァランダーは、不動産業者の失踪を捜査したことから、潜入者たちを追い、追われることになる。


Amazonの『白い雌ライオン』のページ

シリーズの第1作、第2作でもヴァランダーの自信のなさ、弱さが描かれているが、本作で、さらに顕著。
なにしろ、同僚に銃口を向けて精神状態を疑われ、一段落ついたときには、鬱症状で疾病休暇を取っている。
行方を断って、独断で犯人グループと対決を始めてしまうって組織に属する人間としてどうかと思われるところだ(それも身内が人質に取られて、警察に連絡するなと言われた段階では、あり得る行動の選択肢になるのだが)。規律に反しても自分で大きな問題を何とかしようとするという発想は個人的に嫌いだ。

それなのに私は自分でも意外に思うほど、そんなヴァランダーに好意的だ。
理由は、ヴァランダーの自己評価の低さ、そして、それでも物事に前向きに対処しているところにある。
世の中はすごい勢いで複雑化し、人がそこに対応しきれないと感じるのは無理もない。だからといって、それを正当化したり、世の中が間違った方向に向かっていると主張したりするというのは個人的に嫌いだ。前向きさがない。
しかし、ヴァランダーはその事実を受け止め、対応できない不安を正直に認めるが、そんな世の中を批判して正当化はしていないと思う。
その正直さと弱さに惹かれてしまう。
また、よく知らない人の死に対しても、それが殺人によるものであれば強く憤る。それが正義感と言うよりも、人としての情として描かれている。
しょうがない中年のオヤジではあるが、愛すべき男だ。

1990年代のシリーズで、第1作、第2作は東欧だったのに本作では、どうしてアフリカなのだと読む前には思ったが、そうだ、1989年に南アフリカでネルソン・マンデラの釈放があり、90年代にアパルトヘイトの撤廃があった。世界の歴史的な変動をモチーフにするという点で、本作もシリーズの一貫性を維持している。

物語は4月24日に始まり、6月12日に終わる。(プロローグを除いて。プロローグの始まりは4月21日で、やはり4月下旬だ)
つまり、20年以上が経過しているが、季節は今なのだ。
スウェーデン、南アフリカと地理的な違いはあっても、季節の時期的シンクロ感を味わいながら読めた。
南半球である南アフリカの季節は逆だし、スウェーデンは4月下旬ですでに日が暮れるのが遅くなっているという違いを知るのも味わいのうち。
今までの寒々しい描写も悪くないが、春(から初夏?)の描写はいい。4月30日のヴァルボリスメッソ・アフトン(春の祭典)、ヴァランダーの父親の再婚の結婚式の予定の日という夏至祭など、冬が長いこの国でどんなに晴れやかな祭りになるのだろうと想像を膨らませるのも楽しかった。

非常に読み応えがある。1冊だけど、活字が小さく行間が詰まった(19行/1ページ)うえでの700ページ。(先日読んだ上下巻で600ページ(16行/1ページ、活字が2周りぐらい大きい)より何割も文字数が多い。明らかに。
ボリュームがあるのはいいけど、文字が小さく行数が多いと、行から行へと進めるときに、正しい行(次の行)に目が行かないことがしばしば起きる(私だけ?)。なので、最近のでか活字のほうが歓迎できる。
このシリーズを読んでいくにつれ正しい行への目運びができるようになることに期待。
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パズル・パレス ダン・ブラウン

NSA(米国国家安全保障局)は19億ドルの費用を投じたコンピューター<トランスレータ>を使い、暗号化されパス・キーで保護されたメールの復号化処理を行っていた。
<トランスレータ>はその存在が公にされておらず、運用開始時にNSA単独の裁量に任されることになった。
つまり、NSAはだれのどんなメールも秘密裏に盗み読むことできることになった。

NSAの暗号解読課に勤務していたエンセイ・タンカドは、道義心に満ちた男で、この決定に激怒し、人権を著しく侵害すると主張した。そして、NSAの機密保持規約を破り、この事実の公表をはかった。
タンカドは逮捕され国外追放となったが、あきらめることはなかった。<トランスレータ>が解読不能の暗号プログラム”デジタル・フォートレス” を作成しており、<トランスレータ>を装備している事実を世界に公表するように迫った。メールを閲覧できることをNSAが認めれば、デジタル・フォートレスは廃棄すると。
しかし、その連絡を受けたNSA副長官のストラスモアは、その提案を退けた。

デジタル・フォートレスは完成され、タンカドのウェブサイトで無料公開された。
ただし、そのデジタル・フォートレス自体がそれ自体を使って暗号化されておりパス・キーなしには開くことができない。<トランスレータ>にさえ、その暗号を解読できずにいた。

パス・キーは、タンカド本人と、協力者が持っており、タンカドが死んだ場合、その協力者がパス・キーを公表するようになっていた。
その協力者がだれなのかは不明だった。

そんな折、タンカドはスペインで不慮の死を遂げる。デジタル・フォートレスのパス・キーが公表され、<トランスレータ>でその暗号を解読できないとなれば、<トランスレータ>を使ったメール閲覧による情報収集が大打撃を受けることになる。
そこで、NSAの暗号解読課主任のスーザン・フレッチャーはストラスモアに呼び出された。また、同時に、パス・キーを手に入れるため、スーザンの婚約者、デイヴィッド・ベッカーは、同じくストラスモアから依頼を受け、タンカドの遺留品をセビーリャの死体安置所まで取りに行く役目を負った。パス・キーを手に入れるためとは知らされずに。

 
Amazonの「パズル・パレス」検索結果ページ

ミレニアム 4』を読んで、NSA(米国国家安全保障局)に興味が湧いた。といっても軽~い気持ち。
こんな気持ちを満たすにはダン・ブラウンはぴったりでしょう。

デビュー作だけど暗号学者ラングドンのシリーズが当たった後に、日本語版が出た模様。
1998年の出版とのこと。

ラングドンのシリーズより、残虐なシーンが少ないのはよかった。人は、次から次に殺されるけどね。

上下巻で600ページを超える長編だけど、すらーっと読めた。
引き込まれてつづきを読まずにはいられない内容なのはもちろん。
その他、翻訳がいい?翻訳文を読むのに私が慣れた?
文字が大きく(1行の文字数が少ない、1ページの行数が少ない)て読みやすい。新聞の文字が大きくなったぐらいの時期から最近の文庫本はそうなっているのかな。

読み終わって、誰が悪者だったのかと考えると、最初は真の悪者はいなかったように思った。自分の信念が欲望にちょっと絡みついちゃって道を踏み外しちゃった登場人物がしでかしちゃったかなと。
いやいや、違う。殺し屋を雇って、さらに、それが常態化していたことをほのめかす記述から考えると、もう明らかな悪者だ。
また、一件落着して、その人物が殺人者を雇うのを知っていた人物が何のとがめも受けないというのはいかがなもの。司法判断以外で、人を殺すことを容認するって大問題でしょと思わせられたところは、作りが甘いように思えた。

また、エンセイ・タンカドは日本人ということで、日本人の価値観的な記述があるのだけど、う~ん、そうなのって思う。自分のコミュニティ以外の人間を描くとそういうことになるのが普通なんでしょうね。ということで、そこは流さないとね。
それでもエンセイ・タンカドって、漢字でどうかくのよって何度も考えたけど。
同様に、もう一人の日本人や、ポルトガル人の名前が聞いたことないぞと。

スーザンはすこぶる付きの美人で、スタイルも良く、頭脳明晰であるらしい。小説って、その辺を読み手の自由で視覚化想像できるからいいね。

デイヴィッドの指輪のアメリカン・ユーモアのシーンでは、くすりと笑わされ、そして、ちょっと泣かされた。
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04/18のツイートまとめ

kiyohara00

仕事の受注/納品システムから仕事上の問題点に関する私のコメントに対するメッセージ。相手は中央ヨーロッパ時間帯にいるはず。Androidの時計に登録してある相手の都市の時間表示は朝5時台。ほんとにそんな朝早くから働いている?この謎が解ける日は来るのだろうか。
04-18 13:02

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会長 島耕作(6) 弘兼憲史

島耕作は経済同友会のメンバーとともにミラノ万博に視察へ。幹事の女性に秋波を送られるが、一方、行く先々で見かける謎の女性が気にかかる。

STEP 58 You're No Good
STEP 59 My Eyes Adored You
STEP 60 Build Me Up Buttercup
STEP 61 Love To Love You Baby
STEP 62 My Love
STEP 63 Jut To Be Close You

漫画版 島耕作のアジア立志伝
ジャンバルジャムツ・オドジャルガル モンゴル MCSグループ会長
梁穏根 中華人民共和国 三一重工
キット・メン カンボジア ロイヤルグループ

Amazonの『会長 島耕作(6)』のページ

映画の「旅情」が引き合いに出される。
見たよ、昔。でもほとんどストーリーを思い出せない。

アジア立志伝では、どの国にも志のある人がいるものだと感心。
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パーフェクト・ブルー 宮部みゆき

元警察犬マサは蓮見探偵事務所で所長の娘、加代ちゃんこと、加代子と行動を共にしている。依頼で家出高校生を迎えに行ったことから、高校野球界のスーパースターであった高校生が殺されるという殺人事件に関わることになった。
主にマサにより語られる長編ミステリー。


Amazonの『パーフェクト・ブルー』のページ

伏線のはられ方、構成、登場人物の魅力、読みやすさ…すべてパーフェクト。
もちろん、マサはかわいく賢い。
これが作者の初長編だとは恐れ入る。

読みだす前は、高校生が死ぬなんていやだとか、高校野球っていうのもなあ、なんて思っていた。
でも、ほら、犬が活躍する話は読まないわけにはいかない。

読みだして、話が古いよなあって思った。そりゃ、そうだ。出されて30年近い。
ここは、その時代の味を味わうがいいと自分に言い聞かせつつ読む。昭和の終わり近く、さまざまな機器にマイコンと呼ばれるようなコンピューターも仕込まれ、携帯もネットもない時代。台詞も人々の考えも今とは少々違う。

読んで良かったと思える読後感を得られるのもいい。
少年たちのまっすぐさなんていいじゃないか。

事件解明後の高校生諸岡進也の様子や、加代ちゃんの妹、糸ちゃんと、進也とのからみから、続編あるでしょ、と思わされる。うん、あった。『心とろかすような―マサの事件簿』。
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きまぐれミルクセ~キ 能町みね子

能町さんがミルクセーキに焦点を当てて東京、日本各地の純喫茶を訪れる。


Amazonの『きまぐれミルクセ~キ』のページ

私が若い頃によくあって、今でも昔からある町の一角にひっそりとあるような喫茶店。基本1件につき4ページで、文とイラストと写真で描写。
昔よくあったインテリアや小物を取り上げているのを見て、若い人はこういうものに感心したりするんだね、と関心。
能町さんとの世代の違いを感じさせられた。

北(北海道と青森)の純喫茶は遅くまでやっている。寒い時期が多いのにすごいなあ。遅くまで開いているからには、それだけお客さんもいて、町に根付いているんだろう。

装丁に、わあ、やられたぁって思う。
喫茶店と言えばこんなだったという時代(そもそも、今、「喫茶店」って言わないよね)にあったガイドブックにこんな色使いの表紙、背、裏表紙(白地のフレームに写真の表紙に、淡い青緑の地の背と裏表紙)で、こんな紙質と厚さのシリーズがあった。私は、ワインとかカクテルの蘊蓄が書かれたものを読んだように記憶する。

奇しくも、文とイラストと写真の本を続けて読んだ。
それで比較してしまうのかもしれない。それぞれの店の最初の見開き2ページがテキストとイラストで、写真とアクセス情報はめくって次のページにあるというのが、お預けを食らったようで、若干イラッとしてしまう。
私には客観的情報を与えてもらってから、書き手の意見を出してもらうというやり方のほうが合っているのかも。

しばらく前にNHKの『グレーテルのかまど』(「能町みね子のミルクセーキ」)を見て、読もうと思った。
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04/14のツイートまとめ

kiyohara00

翻訳メモ。某企業の経営幹部のプロフィール紹介。xx brings more than yy years of experience...という表現。以前働いた企業での経験を現在の会社に持ってきてくれた、という考え方なんだろう。興味深い。
04-14 15:28

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関口知宏のヨーロッパ鉄道大紀行 関口知宏

ヨーロッパのオランダ、ベルギー、ルクセンブルク、オーストリア、チェコ、5か国を鉄道で巡り、各国人々との触れあいが、文、写真、イラストで描かれる。


Amazonの『関口知宏のヨーロッパ鉄道大紀行』のページ

NHKの鉄道の旅シリーズの一部をおさらい。
5か国と言っていいと思う。1日だけだけどルクセンブルクが入っているから。EU加盟国で人口や面積で比較的小規模だけど、経済的には安定している国ということになるんじゃないかなあ。チェコだけ、旧東欧諸国で若干仲間はずれ感があるけど。
関口氏はそんな各国独特の特色を見つけてまとめている。

先日放送していた総集編(トリンデルさんとヨーロッパのシリーズを振り返るという)で語っていたことを展開した内容。シリーズ本編のテレビ放送では十分に伝わってこなかった関口氏の意見がはっきりと語られている。
世界中で、日本でも高まりつつある内向き指向の現状にあって、
「違う国々、それもこれまで戦いや争いを売り返してきた歴史を持つ同士が一つにまとまる」という挑戦
を日本も進めていかなければならないと考えている。そこでオファーを受けたという流れらしい。

先日やっていた総集編で、私の旅は終わった、と断言していた。
えー、だってまだヨーロッパでも行っていない国があるじゃん。もっと続けてよ、と思ったんだよね。
それに関して、この本の「はじめに」に「ある国を最後にヨーロッパ鉄道の旅を終えようと決めています」とある。

実はこの今の時代の可能性と限界を生んだのが、僕がこれから目指すある国と、その国民性だからです。

と、続く。
シリーズの最後はイギリスだった。でも、放送を見て関口氏がイギリスについて「今の時代の可能性と限界を生んだ」と考えていたというのはわからなかった。
状況的にEU脱退が決まった後だから、「この今の時代の限界を生んだ」と考えるのはわかる。しかし「この今の時代の可能性を生んだ」については何をしてそう言っているのかわからない。これは2006年に刊行されている『関口知宏が行くイギリス鉄道の旅』を読むしかない。
また、今回のイギリスの旅をまとめた本も出るんだろうな(出て欲しい)。ぜひ、読んでそこのところを確かめたい。

あと、今回の旅の『関口知宏のヨーロッパ鉄道大紀行: イタリアをめぐる旅~ローマ、ミラノ、ナポリをゆく』も、ぜひ読みたい。

各国の基本情報は観光ガイドブックレベルの詳しさ。この基本情報を頭に入れて読み進めると内容や関口氏の視点を理解しやすくなる。

小口部分に、各ページの内容に対応する英語の国名と国旗が印刷されている。この国旗が閉じた状態での見出しになる(辞書にあるような)。ちゃんと国旗の模様っぽくなっていて、これが何ともいとおしい。

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プリズン・ブック・クラブ--コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年 アン・ウォームズリー

ジャーナリストでトロントの女性読書会のメンバーである著者、アン・ウィームズリーは、同じ読書会のメンバー、キャロルから刑務所読書会のボランティアをしないかと持ちかけられる。
アンは強盗の被害に遭ったトラウマから固辞するが、結局コリンズ・ベイ中警備刑務所の読書会に本を選ぶボランティアとして参加する。さらにコリンズ・ベイから軽警備のビーバークリーク刑務所に移されたメンバー二人が立ち上げた読書会にも参加する。
読書会の熱心なメンバーに個人的に面会し、読書会メンバーに日記帳を渡し日記を付けてもらい、その内容を本書に記載した。


Amazonの『プリズン・ブック・クラブ--コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』のページ

刑務所の読書会=(刑務所という通常では知り得ない生活)×(日常に会うことはあまりない人々)×(自分にとって大きな楽しみの一つである読書)×(人が選んだ本を読んで、その感想を人々と共有する会)。
そりゃ、面白いだろうね。読む動機は十分。

読んで間もなく、気づく。実は読書会に参加する受刑者たちと自分とは他にも共通している点があるのではないだろうかと。
私たちは何かしかに囚われているというような記載。刑務所収監者は言うまでもない。著者は、過去に強盗に襲われて首を絞められ意識を失った経験からの恐怖。
私は、私で自分の生活の囚われ感を意識する。常に飼い犬をひとりすることがないように、犬と一緒に行けない場所には行かない。主人が家にいるときに、図書館やスーパー、病院に行くぐらいだ。それは週に1度以下。犬のためばかりでもなくて、週末でもたいてい仕事に追われ、時間が捻出できず、犬の散歩以外の外出が月に1回程度のこともある。それは自らの意思でしていることだけど。
誰しも何かしかに囚われているのかもしれない。それが具現されているのが刑務所であるというだけで。
誰しもと思わされるのは、読書会参加の囚人たちの収監前からの環境とアンやキャロルの環境に大きな幅があり、この幅の中にたいがいの人々が入るのではと思わされるからだ。
アンはそのような考えが帰納的に浮かび上がるようにあえて私見を挟まずに事実を綴る。
アンが強盗に襲われたのは、ご主人の仕事の都合で住んでいたロンドン。ハムステッドで家の前にメルセデスを駐車したときだと言う。高級住宅街に高級車。
刑務所読書会支援の会の創設者キャロル・フィンレイは、コリンズ・ベイ刑務所のあるキングストンに近いアマースト島に別荘を持っている。パーティーを開いて運営資金を寄付で賄う。つまり、庶民には真似できないレベルの寄付ができる人々を何人も集められるコネを持っている。トロントの女性読書会がメンバーの家で行われた際の会場やもてなしに供されたお菓子などの描写からも、彼女たちが中級の上、あるいはそれ以上に属している人々だということがわかる。
一方、刑務所読書会のメンバーたちは、殺人、強盗、薬物・麻薬の密売や使用の罪で有罪になった人々。読書会での発言から考えても恵まれた生活を送っていた人々とは考えにくい。
ビーバークリーク刑務所で発足された読書会メンバーにはホワイトカラー犯罪で収監された元上場企業の創設者(つまり、日本で言うとホリエモンのような人だろう)や開業医をしていた服役者もいた。しかし、それがかえって、犯罪者とそうでない人々の境界があいまいなものであると示唆している。

また、読んですぐに感じた読書会の効果。人種や民族、宗教、過去に社会的に置かれていた立場など、刑務所内ではグループに別れており、別々のグループに属する人々が交わることがないが、読書会はそれをやすやすと超えてみせた。
そんなものを希求しているのが自分の一部にもあるという自覚。
自分とは地理的にも社会的にも異なる人々について読みながら、なぜか自分の中の扉が自然に開く。そんな読書になった。

読み終わって初めて気づく。アンは、自分の考えを読者に提示することによって読者がそれに囚われることがないように客観性を重視して書いていたのだということを。
それでいて、アンが意図することを読者に自ずから気づかせる。こういうポイントがいくつもあった。どこでどう仕向けられたのかがまったくわからない。これがいくつもの受賞歴のある報道ジャーナリストの手腕というものなのだろう。

最初に断り書きされているが、アンは本を書くことを前提にこの読書会にボランティアとして参加している。受刑者たちに日記帳を渡して、読書会では語られなかったことを読ませてもらうのも、個別に会うのも、言ってみればすべてネタのため。そう思いながら読んでいたので少ししらけた気持ちを抱えていた。
読んでいる最中は、そんなアンもキャロルには、刑務所読書会ないしはその支援の会を広めるためには役に立つコマだと考えているであろうと思え、キャロルは目的実行のアイディアと推進力が抜群ながら、押しの強いおばちゃんと感じていた。
アンは、ロンドンの強盗事件のことを蒸し返し過ぎだと思った。でも、謝辞を読むと、自分のことをもっと書くようにとか、イギリスの記述を増やすようにとかアドバイスする人たちがいたらしい。
読み終わってみるとキャロルの情熱と偉業に感心したし、アンのロンドンの強盗事件に関する記述も興味深かった。

カナダでは営利団体は前科のある者は理事になれないため、刑務所の読書会メンバーで出所したグレアムは刑務所読書会支援の会の理事になれないが、影響力のある会員にはなってくれたとあるのだが、この支援の会(Book Clubs for Inmates)ウェブサイトのページ(http://www.bookclubsforinmates.com/who-we-are-1/)にFormer book club memberとある理事がいる。この人が「グレアム」なんじゃないのかなあ。(登場人物の名前はキャロルを除いて仮名とあった)
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04/07のツイートまとめ

kiyohara00

今朝はパン屋のおにいさんの髪がボリューミーでくるくるっとなっていて、若者だしパーマでも掛けた?と内心思った。でも、その後鏡に映った自分の頭を見て気がついた。パーマじゃないくせっ毛だと。これから湿度が高くなる。くせ毛属には厳しい季節だ。
04-07 18:13

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04/06のツイートまとめ

kiyohara00

RT @jasonbskates: 私 ❤ チーム 🇯🇵!!! https://t.co/ZqcngFwoUr
04-06 07:30

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マカロンはマカロン 近藤史恵

コウノトリが運ぶもの
青い果実のタルト
共犯のピエ・ド・コション
追憶のブーダン・ノワール
ムッシュ・パピヨンに伝言を
マカロンはマカロン
タルタルステーキの罠
ヴィンテージワインと友情



短編の人が死なないミステリー。ああ、コージーミステリーって言うんだっけ?とにかく、気楽に軽~く読めるのがいい。

おいしそうな料理やお菓子が出てくるけれど、当面フレンチを食べに行くことも作ることも買うこともないだろうという状況から、料理やお菓子の記述はすっ飛ばし気味に読んだ。(ちょうど、戦闘シーンをぶっ飛ばして読んでいるように)そこも味わいどころなのだろうけど。

軽いなりに一ひねりある。「ヴィンテージワインと友情」のひねり技はよかったな。
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04/04のツイートまとめ

kiyohara00

鈴木さん、いつの間にか(昨日からだろう)、ニュース7の担当になっていた。また(おはよう日本→ニュース9→ニュース7と)、ヘアスタイルが変わって、雰囲気変わった。髪をまとめているのがすてき。#NHK
04-04 19:04

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リガの犬たち ヘニング・マンケル

クルト・ヴァランダー シリーズ第2作
スウェーデンの南海岸沿いに位置する小さな町、イースタの警察署に匿名の電話があった。「まもなく近くの海岸に死んだ男二人を乗せた救命ボートが打ち上げられる」という。電話の予告どおり、ボートは打ち上げられる。
イースタ署に勤める警部ヴァランダーは、この捜査にあたる。間もなく死体がラトビア人とわかり、リガの警察署からリエパ中佐が派遣され、何日かの共同捜査の末、この事件の捜査はリガに引き継がれることになった。
死体はリガへ送られ、リエパ中佐も帰って行った。
しかし、リエパ中佐は殺され、中佐の上司からイースタ警察署に捜査の協力依頼があり、ヴァランダーはラトヴィアに飛んだ。


Amazonの『リガの犬たち』のページ

前作同様陰鬱な話が多い。ヴァランダーはベテラン刑事だが、相変わらず自分に自信が持てず、転職を考えている。有能な先輩捜査官のリードベリはガンで亡くなった。スウェーデンでは南で海岸沿いとは言え、寒そうな描写が続く。
しかし、その上を行く、リガの、ラトビアの陰鬱さ。ソ連支配下の監視社会、貧富の差。
これを読み進めば、事件は解決する。そうすれば、心がぱーーっと晴れる。そんな気持ちで読んでいた。
陰鬱であればあるほど、解決は晴れやかに感じるはず。

また、殺されていた二人の男が抱き合うように横たわっていたというのが、何かいいなあ、真相がわかったときに感動があるんじゃないだろうかと思わせる。

また、ヴァランダーが恋愛感情から、荒唐無稽とも思えるとんでもない決断をして、事件に深入りしていくというところもいい。決断の理由として民主化とか真相究明とかいう大義名分より説得力がある。
その恋愛の行方は、相手の作ったへたな手料理で自分と相手の人間の種類の違いを知るというところで事実上決着したのだろう。うならされた。

犯人のリエパ中佐殺害の理由はちょっと呆気ない。でも、その他の点でハラハラどきどきしたから、まあいいか。

次は『白い雌ライオン

BBCがドラマにしたものも見たいなー。
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プロフィール
自分的に人生で一番の読書ブーム到来。 忘れっぽいので、読んだ本のログをとることにしました。 題名だけじゃ、内容を覚えられなくて、読んだことすら忘れるほどの忘れんぼ。
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