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白い雌ライオン ヘニング・マンケル

イースタの不動産業者が売却不動産の査定に出掛けた先で、失踪した。
南アフリカでは、長く収監されていたネルソン・マンデラが釈放されたが、アパルトヘイト(人種隔離政策)は続いていた。動乱期にあるなか、殺し屋のヴィクトール・マバシャは高額の報酬で対象は知らされないまま暗殺の依頼を受けた。マバシャは、依頼主の要請により準備のため、元KGBの協力者、コノヴァレンコとともにスウェーデンに潜入した。
イースタ署に勤める警部ヴァランダーは、不動産業者の失踪を捜査したことから、潜入者たちを追い、追われることになる。


Amazonの『白い雌ライオン』のページ

シリーズの第1作、第2作でもヴァランダーの自信のなさ、弱さが描かれているが、本作で、さらに顕著。
なにしろ、同僚に銃口を向けて精神状態を疑われ、一段落ついたときには、鬱症状で疾病休暇を取っている。
行方を断って、独断で犯人グループと対決を始めてしまうって組織に属する人間としてどうかと思われるところだ(それも身内が人質に取られて、警察に連絡するなと言われた段階では、あり得る行動の選択肢になるのだが)。規律に反しても自分で大きな問題を何とかしようとするという発想は個人的に嫌いだ。

それなのに私は自分でも意外に思うほど、そんなヴァランダーに好意的だ。
理由は、ヴァランダーの自己評価の低さ、そして、それでも物事に前向きに対処しているところにある。
世の中はすごい勢いで複雑化し、人がそこに対応しきれないと感じるのは無理もない。だからといって、それを正当化したり、世の中が間違った方向に向かっていると主張したりするというのは個人的に嫌いだ。前向きさがない。
しかし、ヴァランダーはその事実を受け止め、対応できない不安を正直に認めるが、そんな世の中を批判して正当化はしていないと思う。
その正直さと弱さに惹かれてしまう。
また、よく知らない人の死に対しても、それが殺人によるものであれば強く憤る。それが正義感と言うよりも、人としての情として描かれている。
しょうがない中年のオヤジではあるが、愛すべき男だ。

1990年代のシリーズで、第1作、第2作は東欧だったのに本作では、どうしてアフリカなのだと読む前には思ったが、そうだ、1989年に南アフリカでネルソン・マンデラの釈放があり、90年代にアパルトヘイトの撤廃があった。世界の歴史的な変動をモチーフにするという点で、本作もシリーズの一貫性を維持している。

物語は4月24日に始まり、6月12日に終わる。(プロローグを除いて。プロローグの始まりは4月21日で、やはり4月下旬だ)
つまり、20年以上が経過しているが、季節は今なのだ。
スウェーデン、南アフリカと地理的な違いはあっても、季節の時期的シンクロ感を味わいながら読めた。
南半球である南アフリカの季節は逆だし、スウェーデンは4月下旬ですでに日が暮れるのが遅くなっているという違いを知るのも味わいのうち。
今までの寒々しい描写も悪くないが、春(から初夏?)の描写はいい。4月30日のヴァルボリスメッソ・アフトン(春の祭典)、ヴァランダーの父親の再婚の結婚式の予定の日という夏至祭など、冬が長いこの国でどんなに晴れやかな祭りになるのだろうと想像を膨らませるのも楽しかった。

非常に読み応えがある。1冊だけど、活字が小さく行間が詰まった(19行/1ページ)うえでの700ページ。(先日読んだ上下巻で600ページ(16行/1ページ、活字が2周りぐらい大きい)より何割も文字数が多い。明らかに。
ボリュームがあるのはいいけど、文字が小さく行数が多いと、行から行へと進めるときに、正しい行(次の行)に目が行かないことがしばしば起きる(私だけ?)。なので、最近のでか活字のほうが歓迎できる。
このシリーズを読んでいくにつれ正しい行への目運びができるようになることに期待。
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