カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最近の記事+コメント
カテゴリー

openclose

笑う男 ヘニング・マンケル

イースタ署の警部、クルト・ヴァランダーは、完全な正当防衛ながら人を殺したことから鬱症状から抜け出せず1年以上にわたり休職していた。
デンマークの海岸沿いの町、スカーゲンで療養中、イースタで付き合いのあった弁護士、ステン・トーステンソンに訪ねて来られ、父親の死について調べるように頼まれた。自動車事故として処理されたが、ステンはそうは思えないと言う。
その日ヴァランダーは、退職を決意し、医者とビュルク署長に電話で辞職の意を伝え、辞職届けを出すために1週間後イースタに戻って来た。しかし、ステン・トーステンソンが銃殺されたことを知り、辞職の手続きをするために会ったビュルクに復職を告げ、トーステンソンの事件捜査担当を希望する。


Amazonの『笑う男』のページ

ヴァランダーが朝起きて寝るまで(あるいはほとんど寝ないで翌日を開始するまで)が人物を描くドキュメンタリーのように描かれている。そこに、スウェーデン人、スウェーデンの警察官の生活を知っていく楽しみがある。地方都市で警察官、離婚して独り暮らしの中年男性で、事件を追っている最中はほとんど私生活と呼ぶべきものがないのだが。
でも、これがむしろ私には親しみが湧きやすいのかもしれない。『氷姫』のエリカのように、作家としての野心を持ちながらも、おいしそうな手料理を作り、おしゃれ、ダイエット、恋愛に心を砕く人物や、『消えた少年』のマリアのように、何より気にかかるのは子どものこと、次に仕事と恋愛という人物より、殺人事件という重要案件を前に、他のすべてを脇に押しやって生活するような人物(ヴァランダー)というのが、自分に近いと感じられる。自分はヴァランダーのように社会的に重要な仕事をしているわけではないが、納期に追われて仕事をしていると、他のことは脇に押しやって生活しているから。読書が寝落ちるまでのわずかな時間の楽しみだ。

ヴァランダーは、特に本作ではほとんどの日を朝早くから夜遅くまで捜査に打ち込んでいる。この勤勉さも好感が持てる。

本作には女性刑事、アン=ブリット・フーグルンドが登場する。警察学校で優秀な成績を修め、全国の警察署に望まれながら、本人が希望してイースタ署に配属されたという。
ヴァランダーは、女性であり新しい世代の人間であるフーグルンドを同僚として扱うことに戸惑いを感じながらも、率直にその能力を認め、取り立てていく。というところも、好感だ。
これを読んで、90年代に会ったある女性を思い出した。その女性は、男社会を思わせる業界の一流企業に入社し、本社の広報部門に配属されたという。しかし、女性ゆえに彼女の働きは妨害され評価されなかったため、辞めたという。私は自分がフェミニストだと思うが、彼女の言うことは違うのではないかと思っていた。女性ゆえに差別されたのは真実かもしれないが、そこをなんとかして関係を構築して仕事で成果を上げられなかったのは彼女の能力の問題と受け止めるべきことではないかと。少なくともそれを環境のせいにして言ってまわるのは彼女のプラスにはならないように思えた。
その点、フーグルンドは、先輩刑事に明らかな嘘をつかれた際、正しい方法で対処した。怒るヴァランダーを制し余計に事を荒立てることを避けた。小説の中だからできるのだと言えばそれまでだが、賢い女性としてうかがわせる描写だった。

腐敗行為で免職になった元警官、クルト・ストルムが最後にヴァランダーに協力を申し出る。
その理由についてのヴァランダーの解釈が良い。ストルム本人が現にヴァランダーに言っていることではないのだが、ヴァランダーがストルムの人としての倫理を信じているというところが泣ける。

犯人が真相を簡単に告白するというのはちょっとお粗末なように感じるし、ヴァランダーが最後に絶体絶命から逃れたのもずいぶんラッキーなようだけど、全体に面白かったのでOK。

最後になんと、クリスマスにバイバ・リエパがイースタに来るという。『リガの犬』以来、ヴァランダーがプラトニックに片想いしていた相手が。ヴァランダーは手紙を破っては捨てたり、拙い英語で電話を掛けたり、完全に片想いだと思っていたのに。
シリーズ次作、『目くらましの道』で、きっとその様子が描かれているんだよね?
関連記事
THEME:海外小説・翻訳本 | GENRE:小説・文学 |

COMMENT

EDIT COMMENT

非公開コメント

TRACKBACK

当記事を引用の場合は、ぜひトラックバックをお願いします。それ以外の場合は、ご遠慮願います。


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール
自分的に人生で一番の読書ブーム到来。 忘れっぽいので、読んだ本のログをとることにしました。 題名だけじゃ、内容を覚えられなくて、読んだことすら忘れるほどの忘れんぼ。
カウンター
読みかけ
読み散らかしています。
ブロとも申請フォーム
メールフォーム

*上(別窓)のメールフォームが表示・動作しない場合はこちら

Twitter
Blogram
義援金募集
FC2「東北地方太平洋沖地震」義援金募集につきまして